Riffy

リファラル採用は難しい?続かない・形骸化する4つの壁と、紹介が生まれ続ける運用

目次(タップで開閉)

「制度を作ったのに、紹介がまったく出てこない」。「最初は何件か来たのに、いつの間にか止まってしまった」。リファラル採用を始めた会社の多くが、この壁にぶつかります。

先に、いちばん大事なことをお伝えします。リファラル採用が難しいのは、担当者の熱意が足りないからでも、報酬が安いからでもありません。原因は「運用の設計」にあり、しかも4つの壁に整理できます。 エン・ジャパンが501社に行った調査では、制度化した企業のうち27%が「うまく運用できていない」と答えています。裏を返せば、つまずきどころは共通していて、対策も打てるということです。

この記事では、リファラル採用が続かない・形骸化する理由を「忘れる・探せない・動けない・続かない」の4つの壁として整理し、それぞれに悪い例と良い例、具体的な打ち手を示します。

そもそも、なぜ「難しい」と感じるのか

まず現状を数字で押さえます。難しさの正体が見えてきます。

同じエン・ジャパンの調査では、62%の企業がリファラル採用を実施した経験を持ちます。ところが、制度としてきちんと仕組み化できている企業は、実施企業の33%にとどまります。 多くの会社が「やってみたけれど、仕組みにする前に止まった」状態です。

そして制度化した企業でも、27%が「うまく運用できていない」と回答しています。その理由として挙がるのが「社内で十分に周知されず、紹介件数が少ない」こと。難しさの中心は、制度の存在そのものが社員に届いていない、届いても動きにつながっていない、という運用の問題です。

データで見る「難しさ」の正体
62%
の企業がリファラル採用を実施
33%
実施企業のうち制度化できたのは
27%
制度化企業が「うまく運用できていない」
10–30%減
紹介経由は離職率が低い(定着)

出典:エン・ジャパン『人事のミカタ』(2017年・501社)、Burks et al. QJE(2015年)

報酬額を上げれば解決する、という話でもありません。ここを勘違いすると、コストだけかけて紹介は増えない、という結果になりがちです。理由は後半で改めて触れます。

難しくても、越える価値はある

難しいなら、やめてしまえばいいのでは。そう思うかもしれません。ですが、越える価値はあります。

紹介経由で入社した人は、他のチャネルより定着しやすいことが分かっています。米国の9社・3業種の人事データを分析した経済学の研究(Burks et al., 2015, QJE)では、紹介経由の入社者は離職確率が10〜30%低いという結果でした。友人の紹介で入る人は、会社の実態をある程度理解したうえで入るため、入社後のギャップが小さいと考えられます。

私は、リファラル採用は単発の施策ではなく、運用を積み重ねるほど成果を出しやすい採用手法だと考えています。一度運用の型を作れば、毎回ゼロから働きかける負担は減らせます。だからこそ、最初の運用設計に手をかける価値があると思っています。

リファラル採用が続かない「4つの壁」

紹介が生まれるまでには、社員の中で「思い出す→誰を紹介するか決める→行動する→また次も動く」という流れが起きています。この流れのどこかが詰まると、紹介は出ません。詰まりやすい場所が、次の4つです。

紹介が生まれるまでの流れと、4つの壁の越え方
紹介が生まれるまでの流れ
1思い出さない(忘れる)
定期的に思い出してもらう
2候補者が浮かばない(探せない)
求める人物像を具体化する
3紹介まで動けない(動けない)
紹介の手間と心理的な不安を減らす
4一度紹介しても次が続かない(続かない)
反応・感謝・結果を返す
紹介が生まれ続ける

流れのどこか一つでも詰まると、紹介は生まれない

順に、それぞれの壁と越え方を見ていきます。

壁1 忘れる:制度が社員の記憶から消える

「そういえば、そんな制度あったな」。この状態になっていないでしょうか。リファラル採用は、現場の社員にとって本業ではありません。導入時の説明会で一度案内しても、日々の業務に埋もれて、数週間で頭から消えます。導入直後だけ紹介が来てその後ぱたりと止まるのは、たいていこの壁です。

前述の調査でも、うまくいかない理由の中心は「社内周知の不足」でした。人は、思い出さないものには行動できません。

越え方は、思い出す回数を増やすことです。 一度の号令で終わらせず、月1回でも定期的に制度と「いま採用したいポジション」を社員の目に触れさせます。全社チャットでのリマインド、朝会での一言、新しい募集が出たタイミングでの共有。地味ですが、まず思い出してもらわないと、紹介はそもそも始まりません。

やることは大がかりでなくてかまいません。週の初めに「今週こんな人を探しています」と一言だけ流す。それを止めないだけで、忘れられていた制度はもう一度動き出します。

壁2 探せない:誰を紹介すればいいか分からない

「いい人がいたら紹介して」と言われても、社員は「そもそも“いい人”ってどんな人?」で止まります。求める人物像が具体的に共有されていないと、社員は自分の知り合いの顔を思い浮かべることすらできません。これが2つ目の壁です。

ここは、伝え方ひとつで紹介の出方が大きく変わります。

「探せない」を解く:求める人物像の伝え方
紹介が浮かばない伝え方
  • 「いい人がいたら紹介して」
  • 「エンジニア募集中」
  • 職種名だけを共有する
  • 求める人物像が人によってバラバラ
知り合いの顔が浮かぶ伝え方
  • 「TypeScriptでWebサービスを3年以上」
  • 「少人数で裁量を持ちたいタイプ」
  • 技術・経験・活きる環境まで言語化
  • 1枚の募集メモにして配る

越え方は、求める人物像を「知り合いの顔が浮かぶ」粒度まで具体化することです。 職種名だけでなく、使っている技術やこれまでの経験、どんな環境で活きるタイプかまで、1枚のメモにして渡します。「エンジニア募集」ではなく「TypeScriptでWebサービスをつくってきたエンジニアで、少人数で裁量を持ちたい人」と言われて初めて、社員は「あ、あいつが合いそう」と動けます。

壁3 動けない:手間と「気まずさ」で踏み出せない

紹介したい人が思い浮かんでも、次の壁が待っています。「紹介の仕方がよく分からない」「フォームが面倒」という手間の問題。そしてもう一つ、「紹介して落ちたら、友人と気まずくなるのでは?」という心理的な不安です。

この不安は軽視できません。エン・ジャパンの調査でも、リファラル採用の懸念の1位は「不採用による、紹介した社員と応募者の関係悪化」で53%でした。社員は、友人との関係を壊してまで会社に協力しようとは思いません。

越え方は、手間と不安の両方を下げることです。 手続きは「名前を伝えるだけ」「チャットで一言」くらいまで簡素にします。応募フォームを何ページも書かせる設計だと、そこで止まります。そのうえで、紹介はあくまで「会って話すきっかけ」で、採否は通常どおり公平に決まること、落ちても紹介者の評価には一切関係しないことを、制度としてはっきり伝えます。気まずさの正体は「紹介=採用の約束」という誤解なので、そこをほどきます。「まず一度、カジュアルに話すだけ」という入口にしておくと、社員も友人を誘いやすくなります。

壁4 続かない:紹介しても、反応が返ってこない

最後の壁は、いちばん見落とされます。壁1が「制度を思い出せない」問題だとすれば、壁4は「一度紹介したのに、反応が返ってこない」問題です。せっかく友人を紹介したのに、その後どうなったかを会社から何も言われない。この沈黙が、次の紹介をためらわせます。

紹介が続く会社では、次のような循環が回っています。

紹介 → 人事から反応 → 感謝 → 選考結果の共有 → 次の紹介

どこか一か所でも欠けると、この輪は止まります。とくに「選考結果の共有」がないと、紹介した社員は「自分の紹介は軽く扱われた」と受け取り、次の紹介に進まなくなります。こうして制度は静かに形骸化していきます。

越え方は、紹介への反応を必ず返すことです。 紹介があったら、まず受け取ったことを伝える。選考が進んでも見送りになっても、結果を紹介者に丁寧に共有する。入社が決まったら、感謝を言葉にする。お礼は丁寧でなくてかまいません。「先日は紹介ありがとう、来週会う予定です」の一言でも、紹介した社員は「ちゃんと見てもらえている」と感じます。この反応の循環を止めないことが、次の紹介につながります。

「報酬を上げれば解決する」が間違いである理由

紹介が出ないと、つい「報酬が安いからでは?」と考えます。金額を上げれば動くはずだ、と。ですが、これは4つの壁のどれにも効きません。忘れている社員は金額を知らないし、誰を紹介するか分からない社員は金額では動けません。

高すぎる報酬はむしろ逆効果になることもあります。「お金目当ての紹介」という空気が出ると、質より数の紹介が増え、選考で落ちて、紹介者との関係もぎくしゃくします。報酬は、紹介という善意の行動に対する「お礼」の位置づけにとどめ、主目的にはしないのが続くコツです。金額の決め方そのものは報酬相場の記事で詳しく整理しています。

私ならこう運用する:誰が・いつ・何をするか

4つの壁を越える運用は、特別なことではありません。やることを決めて、止めないだけです。ここでは、私がまず始めるのをおすすめする頻度と担当を紹介します。専任の担当者がいなくても回るよう、先に決めておくのがコツです。

  • 週1回:全社チャットに「今週探しているポジション」を1件、求める人物像つきで投稿する
  • 紹介が入るたび:24時間以内にお礼を返し、選考の結果は紹介者にも丁寧に伝える
  • 月1回:これまでの紹介数・面談数・入社数を共有し、動きを見える化する
  • 入社が決まったら:全社で称賛し、紹介してくれた社員に改めて感謝する
  • 四半期に1回:募集ポジションと求める人物像を棚卸しし、古い情報を更新する

私がいちばん大事だと考えているのは、これを「誰かの気合」ではなく「仕組み」にすることです。担当を決め、チャットの予約投稿やカレンダーのリマインドに乗せておけば、片手間でも続けやすくなります。逆に、担当も頻度も決めずに「気づいたら声をかける」運用にすると、たいてい途中で止まります。

紹介が生まれ続ける運用のチェックリスト

自社のリファラル採用が、4つの壁のどこで詰まっているかを確かめる診断リストです。「いいえ」がある項目は、紹介が止まる原因になっていないか確認してみてください。

  • 月1回など、定期的に制度と募集ポジションを社員に思い出してもらう仕組みがある
  • 求める人物像を、知り合いの顔が浮かぶ具体性で共有している
  • 紹介の手続きが「数ステップ」で終わるほど簡単になっている
  • 紹介と選考を切り分け、落ちても紹介者に不利益がないと伝えている
  • 紹介があったら、結果に関わらずお礼を返している
  • 入社が決まったら、社内で称賛・共有している
  • これまでの紹介数・入社数を可視化している
  • 報酬を「主目的」ではなく「お礼」の位置づけにしている

正直なところ、向かないケースもある

すべての会社・タイミングで有効なわけではありません。無理に回すより、他のチャネルと併用したほうがよい場合もあります。

  • 求める人材が極端に希少・特殊なとき:社員の身近に該当者がまずいない高度な専門職などは、紹介の母数そのものが期待しにくい領域です。専門エージェントやダイレクトスカウトを主にしたほうが早いこともあります。
  • 短期間で大量に採用したいとき:紹介はスピードと量のコントロールが難しく、単独では追いつきません。
  • 社員のエンゲージメントが低いとき:自社を友人に勧めたいと思えない状態では、いくら仕組みを整えても紹介は出ません。先に働く環境の改善が要ります。

リファラル採用は万能薬ではなく、他チャネルと組み合わせる前提の手法です。「やばい」と言われる誤解や向き不向きはリスクと対策の記事でも整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q. 制度を作ったのに紹介が全然出ません。まず何から手をつければいいですか?
多くの場合、原因は壁1(忘れる)と壁2(探せない)です。まず「いま採用したいポジションと求める人物像」を具体的な言葉で1枚にまとめ、全社チャットなどで定期的に思い出してもらう仕組みから始めてください。報酬額の見直しは、その後で十分です。

Q. 報酬を上げれば紹介は増えますか?
増えないことが多いです。忘れている社員や、誰を紹介すればいいか分からない社員は、金額では動きません。むしろ高すぎる報酬は「お金目当て」の空気を生み、質の低い紹介や紹介者との関係悪化につながることもあります。報酬はお礼の位置づけにとどめるのが無難です。

Q. 社員が非協力的です。どうすればいいですか?
「協力しない」のではなく「動けない」「動きたくなる理由がない」ことが多いです。手続きの手間、気まずさの不安、そもそも自社を勧めたいと思えるか。この3つを点検してください。とくに、自社を友人に勧めたいと思えないなら、制度以前に働く環境の課題を先に見たほうがよいです。

Q. 一度形骸化した制度は、立て直せますか?
立て直せます。ゼロから作り直すより、4つの壁のどこで止まっているかを特定するのが近道です。多くは壁1(忘れられている)と壁4(反応がなく熱が冷めた)なので、募集ポジションの再共有と、紹介への感謝・結果のフィードバックから再開すると動き出します。

Q. 専任の担当者がいなくても運用できますか?
できます。ポイントは「思い出す」「感謝を返す」を仕組みにして、属人的な頑張りに頼らないことです。全社チャットでの定期リマインドや、紹介があったら必ず一言返す運用を決めておけば、片手間でも回しやすくなります。

Q. どのくらいの期間で成果が出ますか?
即効性は期待しにくい手法です。制度の想起が社内に定着し、紹介が自然に出はじめるまで数か月かかることもあります。短期の採用数で判断せず、紹介の「動き」が続いているかで見てください。

Q. 経営層や現場のマネージャーを、どう巻き込めばいいですか?
私は、まず経営層自身が紹介する姿勢を見せるのがおすすめだと考えています。トップが友人を紹介すると、現場も動きやすくなります。マネージャーには、自チームの募集ポジションをメンバーに共有する役割を持ってもらうと、思い出す回数が増えます。

Q. 紹介ばかりだと、似たような人ばかりになりませんか?
その懸念はあります。紹介は社員の人間関係に沿って広がるため、放っておくと人材が同質化しがちです。対策は、リファラルだけに頼らず他チャネルと併用すること、そして特定の部署だけでなく多様なチームからも紹介を募ることです。同質化のリスクは「やばい」と言われる理由の記事でも詳しく扱っています。

Q. リマインドや可視化を、少人数で続けるコツはありますか?
手作業をできるだけ仕組みに逃がすことです。定例のリマインドはチャットの予約投稿やカレンダー通知に乗せ、紹介数の集計はスプレッドシート1枚で十分です。凝った道具をそろえるより、止まらない仕組みにするほうが続けやすくなります。

まとめ

リファラル採用が難しいのは、才能や予算の問題ではなく、越えるべき壁がはっきりしているからです。要点を整理します。

  • つまずく原因は「忘れる・探せない・動けない・続かない」の4つの壁に整理できる
  • 壁1は定期的な想起、壁2は人物像の具体化、壁3は手間と気まずさの解消、壁4は紹介への反応(感謝・結果の共有)で越える
  • 報酬額を上げることは、4つの壁のどれにも効かない。報酬はお礼の位置づけにとどめる
  • 制度化できている企業は実施企業の3割ほど。逆に言えば、運用を仕組みにできれば抜け出せる

いちばんの分かれ目は、最後の「続かない」を越えられるかどうかです。私の見るかぎり、紹介が生まれ続けている会社は、思い出す・感謝する・結果を返すを止めずに続けています。報酬の決め方は報酬相場の記事、法務・税務の整え方は報酬は違法?の記事もあわせてどうぞ。

出典・参考

伊藤 駿

執筆

伊藤 駿株式会社Filants(Riffy運営)代表取締役

株式会社Wunderbar(Skettt運営)の取締役として、シード〜シリーズA期の5年半、事業・プロダクト・組織・採用を横断してリードしてきました。その中で、国内外で計15名をリファラル採用で採用。0→1・1→10フェーズの採用と組織づくりの実務、そして生成AIを前提とした開発・業務構築の知見をもとに、現場で本当に使えるリファラル採用の実践知をお届けします。

ShareB!